気候変動への取り組み

気候変動は人類共通の課題であり、当社においても事業マテリアリティの一つと考えています。サステナブルな社会の実現のために、当社事業による貢献と当社自身のCO2排出量削減に取り組んでいます。

貴金属リサイクルによるCO2削減効果

貴金属リサイクルは、鉱山から新たに貴金属を生産した場合と比べて環境負荷は低いとされています。例えばCO2排出量で比較すると金の場合は約10分の1と言われています。仮にこれを当社の貴金属リサイクル量に当てはめて考えると、間接的な削減効果は60.0万t-CO2となり、当社グループの排出量の約30倍となります。当社グループは自らの排出量削減に向けた努力を継続することはもちろんのこと、貴金属リサイクルを通じたCO2削減にも、引き続き貢献していきます。
(当社グループにおいて、どれだけのCO2が削減されたかを示すものではありません)

貴金属リサイクルによる削減効果

60.0万t-CO2

削減効果 約30

当社グループ排出量

2.0万t-CO2

貴金属リサイクルによる環境貢献効果

木に換算すると

4,283万本分

森林の温室効果ガス吸収量に換算すると

25,196ha

琵琶湖の約3分の1に相当

※出典:環境省 林野庁「地球温暖化防止のための緑の吸収源対策」より算出

貴金属リサイクルによるCO2排出量

算出に利用した排出係数
鉱山由来 12,621kgCO2/kgAu
95kgCO2/kgAg
プラチナ・パラジウム、ロジウム 9,297kgCO2/kgPd
1.7kgCO2/kgCu
リサイクル
由来
1,256kgCO2/kgAu
22kgCO2/kgAg
プラチナ・パラジウム、ロジウム 658kgCO2/kgPd
0.7kgCO2/kgCu

出典:米国環境保護庁WEBページ「Life Cycle Assessment Data for Computer Products, Mobile Phones and Mixed Waste」を参考に算出

CO2排出量における第三者検証

主力製品である99.99%金グラニュールに対し、原材料回収から製品製造(Cradle to Gate)までのCO2排出量の算定並びにISO14040:2006、ISO14044:2006に基づいた第三者検証を実施しました。この数値を当該製品のユーザー様が自社の間接排出量算定に一次データとして使用できる形でご提供します。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく開示

TCFDへの賛同表明とガバナンス体制の強化

当社は、2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対する賛同を表明し、事業部門、技術部門、管理部門から成る社内横断のTCFD対応チームを立ち上げ、気候変動関連のリスクと機会の特定、気候変動が当社事業に与える中長期的なインパクトの把握、対応策の検討を行いました。
現在は代表取締役社長(CEO)が統括し、事業部門、技術部門、管理部門の担当役員等をメンバーとするサステナビリティ委員会の気候変動分科会で対応しています。明らかになったリスクと機会については毎年1回以上見直しを行い、対応状況はサステナビリティ委員会、取締役会に報告するとともに、重要事項については取締役会で決議することでガバナンスを効かせています。

戦略

リスクと機会の抽出

2030年における当社貴金属事業(国内および北米精錬事業)、環境保全事業に影響を及ぼす気候変動関連のリスクと機会の抽出を「短期(1年以内)」「中期(1年超3年以内)」「長期(3年超10年以内)」に分けて行うとともに、「大」「中」「小」の3段階で定性的に評価しました。その際には2030年以降2050年に向けての気候変動のさらなる影響についても考慮しました。その結果、「政策・法規制」「市場」「技術」などが特定されました。

項目 内容 2030年 2050年 対応策
4℃ 1.5℃
リスク 移行リスク 政策・法規制
  • カーボンプライシング(含む炭素税)の適用によるコストの増加
-
  • CO2フリー電力への切り替え、営業車両のEV化等を通じた2030年度CO2削減目標の達成
物理リスク 急性
  • 台風や水害等の自然災害激甚化により施設が損傷し、長期間操業が停止
- -
  • ハザードマップに基づき影響が想定される事業所のBCMの拡充削減
  • 大型の設備投資時に、災害に強い立地の選定や災害対策を実施
機会 移行リスク 政策・法規制
  • カーボンプライシングの適用により、CO2排出が相対的に少ないリサイクル金属の評価向上、競争力増加
  • 規制対応や、CO2排出量報告の強化
-
  • トレーサビリティを活かしたリサイクル金属の付加価値販売を強化
  • CO2排出量分析等付加価値をつけた産業廃棄物管理システムの提供
  • 規制対応が難しい企業の支援を通じた事業の拡大
市場
  • 規制対応や、CO2排出量報告の強化
-
  • 低品位スクラップの取り扱い、取り扱い金属の拡充等リサイクル品目の拡充
技術
  • 水素等脱炭素に資する技術開発の早期化、早期商業化に向けたインセンティブの拡大
-
  • 余剰電力での水素活用等のさらなる推進

シナリオの概要

シナリオ分析を行い、事業への影響を調査しました。シナリオは2100年までに、産業革命前に比べ、世界の平均気温が4℃前後上昇するシナリオと、1.5℃上昇するシナリオの2つを採用しました。分析に際しては、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook 2021、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書、日本政府の発表している資料等を参考にしました。

シナリオ分析結果

4℃シナリオは、現状の延長の成り行きの世界であり、2030年時点では影響は少ないことが分かりました。一方で2050年に向けては、異常気象による台風や水害等自然災害の激甚化といった物理リスクの増加が予想されます。当社では事業継続マネジメント(BCM)の策定を行うとともに、工場移転時に災害に強い立地を選定するなどの対応を行っています。1.5℃シナリオでは、今世紀半ばのカーボンニュートラル実現に向け、強力な政策措置がなされると想定されます。その一つである炭素税を含むカーボンプライシングが導入されると、コスト増加の影響を受けることがリスクとなります。一方で貴金属事業においては、CO2排出が相対的に少ないリサイクル金属の評価やコスト面での優位性が高まる可能性があります。リサイクル貴金属の生産およびトレーサビリティに強みを持つ当社にとっては機会といえます。
また環境保全事業においても、環境負荷の軽減につながるシステムを提供している当社にとっては機会になります。当社はリスクを抑制するとともに、機会の拡大に注力していきます。

リスク管理

気候変動分科会において、気候変動にかかるリスクと機会に対する対応状況や、CO2排出量を取り纏め、サステナビリティ委員会において、毎年モニタリングおよび評価しています。また取締役会にもその内容を報告し、監督・指示を受けます。合わせてグループリスク管理部門にも報告することで当社グループ全体のリスク管理に反映しています。

CO2排出量の実績と計画

当社グループにおける2023年度の全CO2排出量は、基準年以降にグループ化された拠点分(海外2拠点)を除くと、2015年度比で約31%減少しました。減少の内訳は、国内では電力会社の見直し、車両入替および工場移管による燃料変更等により低減し、約60%減少しました。
海外では、都市ガスの使用量減少およびCO2排出原単位が下がったこと等で低減し、約7%減少しました。
当社グループではCO2排出量の削減を事業マテリアリティとしており、2030年度までにCO2排出量を2015年度比で63%削減することを目標としています。さらに2050年度にカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しています。

<データの収集範囲>
当社および連結子会社から排出されるScope1および2(集計期間4月-3月)

※2024年3月31日現在の連結子会社を対象とし、対象から外れた場合は遡ってデータを更新しています。対象に加わる場合は、CO2排出量の推移においては加わった年度からデータを追加しています。

CO2排出量の推移

CO2排出量削減計画