トップコミットメント

ESGへの取り組み

ESGのすべての観点において企業の社会的責任を高いレベルで果たします。

環境問題に関して

産業活動が生みだす富の源泉は地球の天然の資源と人間の働きであり、その乱用や消耗は持続的成長の可能性を閉ざします。自然と資源を守ることが当社の事業そのものであると自覚しながら日々の事業にあたっています。その中で「循環価値へのコンセンサス」が重要であることを改めて認識しました。たとえば貴金属製品を提供するブランドの原料がどんどんリサイクル由来となった経緯において、供給側である当社がバリューチェーン全体の透明性を徹底的に高め、それに対して需要側のブランドの経営者・社員・顧客・投資家が再生資源利用に前向きになったことが決め手でありました。そして、次に「市場原理」が決め手となります。循環価値へのコンセンサスによってグリーンプレミアムという価値が生まれ、日本のアサヒプリテックや北米のアサヒリファイニングの再資源化エンジンがフル回転しています。天然鉱山において、その産品である金属価値が上昇すればより多額の費用をかけても深く掘ることで増産できるという原理が働きます。それと同じ原理が都市鉱山・産業鉱山にも働き、グリーンプレミアムによって加速され、天然に対するリサイクルの優位性が高まっています。おおげさにいえば、今まさに、グリーンなグローバル経済に移行する文明史的転換点に立っていると感じます。

社会・人権配慮に関して

当社の事業には下請けや階層の構造がほぼありませんから、当社のESGスコアは、未だ不十分なところはありますが、透明性の高い正味のスコアです。伝統的に重視している労働の領域に関しても、営業・生産・輸送・管理等の職務領域における実際の業務のほとんどすべてを当社の社員が直接担っており、賃金や権利を抑制するための子会社・外注先・インフォーマル経済に依存しておりません。従って、サプライチェーンも雇用構造も簡素で可視化されています。さらに、労働者派遣法の利用や一部事務業務の専門機関への委託に関しても最小限に絞り込むつもりです。ある意味でこれまで経済合理的とされてきたことから離れようとしており、雇用シーンにおいて単層のプラットフォームに近づけています。その上で、労働条件の引き上げ、安全・健康への配慮、公平性・多様性・包摂性の推進に努めています。
近年の取り組み事例を三つご紹介します。一つ目は「初任給の引き上げ」です。2024年4月入社の修士卒の初任給を30万円に引き上げました。2026年4月には再び二桁の水準引き上げを計画しています。そして、個人毎の能力や貢献を評価しながら全階層における賃金水準を見直しています。二つ目は国内の「健康経営優良法人」に5年連続認定された健康支援活動です。当社は2000年代から法定基準を大きく上回る充実した健康診断制度を設けており、前年度は中高年層向けの大腸カメラ健診の追加や再検査費用の補助拡大を行いました。三つ目は「エンゲージメント調査」の強化です。従業員の心身両面の安全衛生と労働の生産性向上のため、前年度から外部の専門機関の協力を得ながら調査頻度を高めるとともに、調査にもとづいて状況を改善するために職場単位のフォローアップセッションを入念に行っています。
これらのいわば人的資本投資の趣旨はさきほど述べた単層のプラットフォームによってはじめて実現します。人材をコストとみなして、雇用の階層化や流動化に傾斜すれば、仮に充実した健診制度を導入しても、共通の目的を持った業務集団の中でその恩恵に浴するのは一部の人々にすぎないという結果となり、穴の空いたバケツのように実効性を欠きます。生態系に関しても人権に関しても、それらを脅かすような競争を仕掛けないという当社の姿勢をPRIの投資家の皆さまや若き求職者の皆さまにわかってもらいたいです。

コーポレート・ガバナンスに関して

当社の取締役会の構成等については、取引先である金融機関等から先進的であると評価されています。当然ながら形式だけ整っていればよいわけではありません。特に社外取締役にとって経営にかかわる情報が不足することがあっては致命的であると考えており、機関決定に先立って十分な関連資料を早期に提供するだけではなく、事業や投資の詳細についての説明会を適時開催しています。さらに、百聞は一見に如かずということもありますから、国内拠点のみならず北米全事業拠点の現地訪問もアレンジしました。その上で、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた証券取引所からの要請に対応すべく経営努力を積み重ねています。
前年度は、株主価値を尊重するガバナンス設計を強化するため、CEOや執行役員級を対象として、短期インセンティブである現金賞与の削減から財源を得て、トータルシェアホルダーリターン連動型の株式報酬制度を開始しました。株価や配当の変動に応じて対象者に付与される株式が変動する中長期的インセンティブです。株価と配当の双方の要素をあわせて所定の期間に25%以上の下落があれば本株式報酬はゼロとなります。欧米のスタンダードと比べても厳格な基準を備えていると思います。

ステークホルダーの皆さまへ

ソーシャルとファイナンシャルの共通価値の創造
ユニークな事業ポジションから当社の企業価値を高めます。

「この手で守る自然と資源」、これが当社の存在目的であり、揺るぎなき信念でもあります。米国の一部の州の会社法に規定されている「パブリック・ベネフィット・コーポレーション」は、その定款において環境問題や社会問題への取り組み等の公益的目的を謳った営利企業です。わが国の会社法にそのような規定はありませんが、当社は和製パブリック・ベネフィット・コーポレーションだと自負しています。
わたしたちができることを社会の課題にぶつける、社会の課題をわたしたちの事業の営みに引き込む、このようなインサイドアウトとアウトサイドインを現場レベルで繰り返しています。リサイクル生産分野では、CO2排出を抑制するだけではなく、酸処理過程で発生するNOxと呼ばれる窒素酸化物を封じ込めて硝酸として再利用しています。廃棄物処理分野では、PFOSやPFOAと呼ばれる有機フッ素化合物を超臨界水で分解する試みを行っておりました。
かけがえのない地球の自然と資源を守るという産業の良心を失わず、ROE等を指標として適正な利潤が伴う成長を継続していくことがわたしたちの使命にほかなりません。当社のビジネスと社会の問題解決の交点において、ソーシャルとファイナンシャルの両面で当社の価値が顕現します。2030年度を見据えた中長期ビジョンは、その具体的な道筋を示すものです。
公平で持続可能な社会に向けてインパクトをもたらす成長を実現するため、すべてのステークホルダーの皆さまには、引き続きご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2024年11月
AREホールディングス株式会社
代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)
東浦 知哉