当社グループは、エレクトロニクス製品や自動車部品、宝飾品などの製造に不可欠な貴金属原料のグローバルな調達活動において、国際的な機関が定めるガイダンスに準拠した管理体制を構築し、貴金属サプライチェーンの一員として、法令遵守・国際規範の尊重、人権・労働、安全・衛生、環境、公正取引・倫理などについて社会的責任を果たすため、「責任ある貴金属管理」を推進しています。
責任ある鉱物調達
鉱物資源が紛争や人権侵害を引き起こしている武装勢力の資金源となることへの懸念から、2010年に米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)が成立し、コンゴ民主共和国および周辺9ヶ国の紛争鉱物が規制対象となり、3TG(スズ、タンタル、タングステン、金)を使用する米国上場企業は、原産国調査やデューデリジェンス手続きを実施し、紛争鉱物の使用状況を報告する義務が課せられました。デューデリジェンス手続きについては、国際機関である経済協力開発機構(OECD)が「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデューデリジェンス・ガイダンス(以下、OECDガイダンス)」を公表しています。OECDガイダンスは、①企業管理システムの構築、②リスクの特定と評価、③特定したリスクへの戦略と実施、④独立した第三者監査の実施、⑤年次報告の5ステップの枠組みとなっています。
EUにおいても、2021年1月に施行された紛争鉱物規則において、紛争地域および高リスク地域から3TGを含む鉱物をEU内に持ち込む輸入者に対して、デューデリジェンス手続きを実施する義務が課せられるようになり、「責任ある鉱物調達」がグローバルに広がっています。
責任ある貴金属管理
金・銀はロンドン貴金属市場協会(LBMA)が、プラチナ・パラジウムはロンドン・プラチナ・パラジウム市場(LPPM)が、製品の品質や貴金属の分析能力、責任ある調達などの審査に合格した精製会社を「グッド・デリバリー・リファイナー」として認定しています。アサヒメタルファインは金・銀・プラチナ・パラジウムについて、アサヒリファイニング(USA・Canada)は金・銀について、グッド・デリバリー認定を受けており、世界の市場で信頼を得ています。
グッド・デリバリー認定を維持するためには、定期的な品質・技術審査以外に、OECDガイダンスに基づいた「責任ある金・銀のガイダンス(以下、LBMAガイダンス)」、「責任あるプラチナ・パラジウムのガイダンス(以下、LPPMガイダンス)」と呼ばれるデューデリジェンス・ガイダンスに準拠し、第三者機関による監査を毎年受けることが要求されています。
近年のLBMAガイダンスでは、紛争鉱物、人権侵害、マネーロンダリング、テロ資金供与、不正取引などの防止に加えて、環境やサステナビリティに係る社会的責任を果たすことも求められるようになっています。
また、アサヒメタルファインならびにアサヒリファイニング(USA・Canada)は、責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)より、責任ある鉱物保証プロセス(RMAP)に適合した紛争鉱物不使用の金のリファイナーとしても認定を受けています。
また、アサヒメタルファイン(当時:アサヒプリテック)は2019年7月に国内のリファイナーとして初めて、RJC※1(責任あるジュエリー協議会)の行動規範に関するCOP※2認証を取得し、2021年7月には加工・流通過程管理に関するCOC※3認証も取得しました。倫理、人権、社会、環境の各面における行動規範に加え、デューデリジェンスとトレーサビリティによる加工・流通過程管理についても、RJCの厳格な審査基準をクリアし、金やプラチナ等の貴金属サプライチェーンの一員として責任を果たしてまいります。
(※1)RJC:鉱山から小売りまで、貴金属やダイヤモンドなどを取り扱う宝飾業界の企業を対象とし、取引の透明性と責任ある企業行動を推進する非営利組織
(※2)COP:Code of Practicesの略
(※3)COC:Chain of Custodyの略
責任ある貴金属管理体制
貴金属サプライチェーンにおいては「責任ある貴金属管理方針」を制定し、国内グループ各社を横断的に管理する「責任ある貴金属最高責任者代表取締役社長管理委員会(RPM委員会)」を組織し、最高責任者である代表取締役社長が任命した「コンプライアンス・オフィサー(管理責任者)」のもと、方針の策定・変更を含む重要施策の決定、管理システムの整備、実施状況のモニタリング、従業員への教育、経営層への報告などを行うための管理体制を整えています。
当社はサプライチェーンに悪影響を及ぼす取引を高リスクと評価し、リスクが懸念される取引についてはRPM委員会で審議を行い、必要に応じて追加のデューデリジェンスを実施するなど、管理体制の強化を図っています。